学会事務局の引き継ぎチェックリスト|事務局移転・役員交代で渡すもの

学会・研究会の事務局公開 River Tech合同会社

学会・研究会の事務局の引き継ぎで困るのは、作業の手順よりも「名簿や口座やアカウントが、どこにあって、誰の名義か」がわからないことです。この記事では、事務局の移転や役員・世話人の交代のときに渡すものを8つに分けて、確かめ方と一緒にまとめました。印刷して書き込める引き継ぎ表、移転の進め方、会員向けの「事務局移転のお知らせ」の文例も載せています。

結論:引き継ぎは「どこに何があるか」と「誰の名義か」の一覧から

先に結論をまとめます。

  1. 事務局の持ち物を8つに分けて書き出す(名簿・会費の口座と決済・事務局メール・ドメインとサーバー・旧サイト・会員ページの鍵・問い合わせ先・年間の仕事)
  2. 項目ごとに「どこにある」「名義・担当」「渡した日」を書く(下の引き継ぎ表を使えます)
  3. 名義は個人から団体へ移す(個人のメール・個人のカード・個人のスマホにひもづいたものを残さない)
  4. 古い連絡先を、サイトの外まで含めて書き換える
  5. 前の担当の方の権限は、渡したあとに外す

ホームページの更新のしかたの引き継ぎは、担当者が替わっても回るホームページの更新で詳しく書いています。この記事は、ホームページを含む事務局まるごとの引き継ぎを扱います。

事務局の移転・交代で起きやすいこと

公開されている学会・研究会のホームページを見て回ると、事務局の移転や役員の交代のあとに、次のような状態になっている例が少なくありません。

  • 事務局を別の大学へ移したのに、旧サイトが公開されたままで、問い合わせ先に旧事務局の電話番号が残っている
  • 旧大学名のページと今のページが二重に公開され、どちらが正しいかわからない
  • 代表世話人の交代をきっかけに、ホームページが「一旦閉鎖」されたままになっている
  • サイトの管理者がいなくなり、更新できる人がいない

また、事務局の求人を見ると、会員台帳の管理、会費の集金、ホームページの更新、会員へのメール配信が、一人の仕事として並んでいることがよくあります。それだけ引き継ぐ範囲が広く、ひとつ抜けると会員の方に影響が出やすいということです。

引き継ぐもの8つと、確かめること

1. 名簿と共有範囲

名簿は、事務局でいちばん大事な持ち物です。まず正本(いちばん新しい、元になる名簿)がどれかを決めます。前の担当の方のパソコンに、少し古い名簿のコピーが何種類も残っていることはよくあります。

  • 正本の場所(共有の表、事務局のパソコンのファイルなど)と、ファイルの名前
  • 誰が見られて、誰が書き換えられるか(共有範囲)
  • 退会・休会・住所変更をどの列に、どう書いているか

共有の表を使っている場合、「リンクを知っている人なら誰でも編集できる」設定になっていないかを必ず確かめてください。生年月日や住所が入った名簿なら、「特定の人だけ」に絞るのが基本です。引き継ぎが済んだら、前の担当の方の権限を外し、個人のパソコンに残ったコピーは消してもらいます。名簿の整え方は、名簿と会費管理はスプレッドシートのままでも参考にしてください。

2. 会費の口座と決済サービスの名義

会費の振込先は、移転でいちばん混乱しやすいところです。

確かめること よくある状態
口座の名義 前の会計担当の方の個人名になっている
通帳・キャッシュカード・ネットバンキングのログイン どこに保管しているか、前の担当の方しか知らない
郵便振替口座の届け出 代表者や住所の変更が届けられていない
カード決済サービスのアカウント 個人のメールアドレスで登録している
決済サービスの入金先 個人の口座になっている

名義や代表者の変更は、多くの場合、金融機関や決済サービスへの届け出が必要です。必要な書類は先方によって異なるため、早めに確かめておきます。振込先を変えるときは、会員の方が古い口座へ振り込むことを考えて、しばらくは古い口座も残すのが安全です。カード決済を使っている場合は、ログインのときにスマホへ届く確認(2段階認証)の届け先も、新しい担当の方に移します。会費の受け付け方そのものを見直す場合は、入会申込と会費・参加費をオンラインで受け付ける方法もご覧ください。

3. 事務局のメールアドレス

事務局のアドレスが、前の担当の方の大学や病院のアドレスになっていると、異動や退職で使えなくなります。

  • 会員や関係先が今使っている事務局のアドレスを、すべて書き出す
  • 旧アドレスに届くメールを、新しいアドレスへ転送できるか、自動返信を置けるか
  • メーリングリストや一斉メールの管理者は誰か
  • 申込フォームの自動返信や通知メールの送信元が、どのアドレスになっているか

移転をきっかけに、団体のドメインのアドレスか、団体で持つ共有のアドレスに切り替えると、次の交代では書き換えが要らなくなります。

4. ドメイン・サーバーの名義と更新日

ドメイン(サイトとメールの住所)は、更新の期限を過ぎると、ホームページもメールも止まります。

  • 名義(登録者)は誰か、管理している会社はどこか
  • 更新日はいつか、自動更新か、支払いは誰のカードか
  • 期限のお知らせが届くメールアドレスは誰のものか
  • サーバー(データを置く場所)の契約者と支払い方法

名義を変えるときは、管理している会社の手続きで行います。名義人ご本人の確認が要ることが多いので、前の担当の方に連絡がとれるうちに進めてください。確かめ方は、リニューアル前のチェックリストでも紹介しています。

5. 旧サイトと旧URLの転送

事務局のある大学のサーバーにホームページを置いていた場合、移転でサイトごと消えることがあります。逆に、閉じ忘れた旧サイトが検索に残り、古い連絡先や古い申込書に会員の方がたどり着くこともあります。

  1. 旧サイトの公開分(お知らせ、PDF、写真、過去の大会の記録)を保存する
  2. 旧サイトのページの一覧を作る
  3. 旧URLから新しいページへの転送(301リダイレクト。古い住所に来た人を新しい住所へ自動で案内する設定)をかける
  4. 転送できない場合は、旧サイトのトップに「移転しました」と新しいURLだけを残す
  5. 検索の結果が新しいサイトに切り替わったのを確かめてから、旧サイトを閉じる

6. 会員ページの鍵・パスワードの渡し方

会員ページ、動画の限定公開、パスワード付きのPDF、管理画面のログインなど、「鍵」にあたるものを書き出します。

  • パスワードそのものは、メールやチャットに貼らない。会って伝える、電話で伝える、紙に書いて手渡しするなど、記録が残りにくい方法にする
  • 引き継ぎ表には、パスワードではなく「どこに保管しているか」だけを書く
  • 受け取ったら、新しい担当の方がパスワードを変える
  • うっかりメールやチャットに貼ってしまったら、そのパスワードは作り直す

会員の皆さんで共通のパスワードを使っている場合は、交代のときに変えて、新しいパスワードを会員の方にお知らせするまでを一つの作業として段取りしておきます。会員ページの作り方そのものは、会員限定ページを作る方法で比べています。

7. 問い合わせ先の書き換え

連絡先は、思っている以上にいろいろな場所に書かれています。

場所 書き換えるところ
ホームページ トップ、入会案内、ページの一番下、お問い合わせ、大会ページ
配布しているファイル 入会申込書・規約・投稿規定のPDFやWord、振込用紙
学会誌 奥付、投稿規定、会告
メール 自動返信の文面、署名、メーリングリストの案内
外部の一覧 上部団体・関連学会の加盟団体一覧、共催学会の案内、地図アプリの情報
郵便 旧住所あての郵便物の転送の届け出

外部の一覧は、自分たちでは書き換えられないことが多いため、先方へ連絡する先を一覧にしておきます。

8. 年間の仕事カレンダー

引き継ぎで抜けやすいのは、年に1回しかない仕事です。月ごとに書き出しておくと、新しい担当の方が先回りできます。

時期(例) 仕事
年度のはじめ 年会費の請求、名簿の更新、退会の確認
総会の前 決算・監査、議案の発送、役員改選の準備
学術集会の数か月前 案内の掲載、参加登録の受付、会場との連絡
学会誌の発行時 発送、宛先不明で戻ってきた郵便の記録
ドメイン・サーバーの更新月 更新と支払いの確認
年度の終わり 未納の方への連絡、次年度の会費の案内

時期は会ごとに違うので、前の担当の方と一緒に、去年の実際の日付を書き込むのがいちばん確実です。

印刷して使う引き継ぎ表

上の8つを1枚にまとめた表です。印刷して、前の担当の方と一緒に埋めてください。

項目 どこにある 名義・担当 渡した日
名簿の正本と共有範囲
会費の口座(銀行・郵便振替)
カード決済サービスのアカウント
事務局のメールアドレス・メーリングリスト
ドメイン(更新日:  月  日)
サーバー・ホームページの管理画面
旧サイトの保存と旧URLの転送
会員ページ・動画・PDFのパスワード(保管場所だけ)
問い合わせ先を書き換えた場所
年間の仕事カレンダー
制作会社・印刷会社など外部の連絡先

「名義・担当」の欄に個人の名前が入った行が、名義を移す候補です。

移転・交代の進め方

  1. 2〜3か月前:引き継ぎ表を埋め、名義が個人になっているものを洗い出す
  2. 1〜2か月前:ドメイン・口座・決済サービスの名義変更を始める。旧サイトを保存する
  3. 移転の日:新しい担当の方が、すべてに自分でログインできることを確かめる。ホームページの連絡先を書き換え、会員へお知らせを出す
  4. 移転のあと:旧アドレスの転送、旧URLの転送、外部の一覧の書き換えを確かめる。前の担当の方の権限を外す

会員へのお知らせは、次のような文面で足ります。

事務局移転のお知らせ ○年○月○日より、本会の事務局を下記へ移転いたしました。 新事務局:〒○○○-○○○○ 住所/電話/メールアドレス 旧事務局あての郵便物とメールは○年○月まで転送いたしますが、今後は新事務局へお送りください。 年会費の振込先に変更はありません。(変更がある場合は、新しい振込先と、旧口座をいつまで使えるかを書きます)

よくある落とし穴

  • ドメインの更新期限のお知らせが、前の担当の方にしか届いていない:ある日突然、サイトとメールが止まります
  • 振込先を変えたのに、配布している申込書のPDFが古いまま:古い口座への振込が続きます
  • 旧サイトを先に消してしまった:過去の大会の記録や会告が残らず、旧URLから来た方が行き止まりになります
  • 前の担当の方の権限が残ったまま:名簿を見られる人が、知らないうちに増えていきます
  • パスワードをチャットで送った:会話の記録に残り続けます。渡したあとに変えておきましょう

自分の会で確かめる3つの質問

  1. ドメインの更新日と、期限のお知らせが届くメールアドレスを、今すぐ答えられますか?
  2. 会費の口座とカード決済サービスのログインに、前の担当の方の個人のメールやスマホが使われていませんか?
  3. ホームページの外(申込書のPDF、学会誌、外部の一覧)に、旧事務局の連絡先が残っていませんか?

ひとつでも「わからない」があれば、そこが引き継ぎで最初に手をつけるところです。

引き継ぎの前に「手間の地図」を作る

自分たちだけで書き出すのが難しい場合は、River Techの学会・研究会の事務局向けのご案内にある「棚卸し診断」(オンライン45分・15,000円(税込))をご利用いただけます。今の事務作業と、作業ごとに使っている名簿やアカウント、担当の方をうかがい、「手間の地図」1枚にまとめてお渡しします。できあがった1枚は、そのまま引き継ぎ書の下書きとしても使えます。今お使いの名簿やサービスは、できるだけそのまま活かす前提です。

よくある質問

事務局の移転は、どのくらい前から準備すればよいですか?

一般に、移転先が決まってから実際に移るまで、2〜3か月は見ておくと安心です。ドメインや決済サービスの名義変更は、前の担当の方の確認が要ることが多く、思ったより日数がかかります。会費の請求や学術集会の準備と重ならない時期を選ぶのもおすすめです。

ドメインが前の事務局長の個人名義になっています。変えられますか?

多くの場合、ドメインを管理している会社の手続きで名義(登録者)を変えられます。名義人ご本人の確認が必要になることがあるため、前の事務局長に連絡がとれるうちに進めてください。あわせて更新の期限も確かめ、期限が近ければ先に更新しておきます。

旧事務局のメールアドレスは、いつまで残せばよいですか?

会員の方のアドレス帳や過去の案内に残っているため、少なくとも次の会費請求や総会のご案内が一巡するまでは、新しいアドレスへの転送か自動返信を残すのがおすすめです。大学や病院のアドレスは異動で使えなくなることがあるので、これを機に団体用のアドレスへ移すと次の交代が楽になります。

会員ページのパスワードは、どうやって渡せばよいですか?

メールやチャットに貼らず、会って伝える・電話で伝えるなど、記録が残りにくい方法で渡します。受け取った方は、引き継いだあとにパスワードを変えておくと安心です。会員の皆さんで共通のパスワードを使っている場合は、変えたあとに新しいパスワードをお知らせする段取りも決めておきます。

引き継ぎの資料づくりを手伝ってもらうことはできますか?

はい。River Techの棚卸し診断(オンライン45分・15,000円(税込))では、今の事務作業と、それぞれに使っている名簿やアカウントをうかがい、「手間の地図」1枚にまとめてお渡しします。引き継ぎ書の下書きとしてもお使いいただけます。

学会・研究会の事務局の方へ

今のやり方を活かして、事務局の手間をひとつずつ減らします。

ホームページ・会員ページ・動画配信・申込受付・会費・名簿まで、今お使いの表を活かしてつなぎます。まずは棚卸し診断(オンライン45分・15,000円(税込))で、今の事務作業を「手間の地図」1枚にまとめてお渡しします。