学会の会員管理システムの選び方|「誰が会員か」の正本を先に決める

学会・研究会の事務局公開 River Tech合同会社

学会・研究会の会員管理システムを選ぶとき、最初に決めたいのは道具ではなく「誰が会員か」を決める1つの記録、つまり正本(いつも正しいとみなす元の記録)です。この記事では、正本の決め方、退会・休会・未納の表し方、会員一覧と配信先の分け方、列の担当の決め方を整理したうえで、既製サービス・今の表を活かす形・個別に作る形の3つを比べる判断表と、業者に聞く質問をまとめます。

結論:選ぶ前に決める5つのこと

  1. 「誰が会員か」の正本を1つに決める(名簿の表か、決済の記録か、既製サービスか)
  2. 退会・休会・未納を、行を消さずに「状態」の列で表す
  3. 会員一覧に載せる人と、連絡・配信する相手を別の列で決める
  4. 名簿は1行に1人。メモや合計の行を混ぜない
  5. 手で入れる列と、自動で埋まる列を分け、触る人を決める

この5つが決まると、どの種類の会員管理が合うかもほぼ見えてきます。逆に、ここを決めないまま道具を替えると、新しい画面でも「この人は本当に会員?」という確認が残りがちです。

なぜ「正本」が先なのか

会員管理でよく起きるのは、会員の情報が何か所にも分かれていることです。事務局の名簿、会費の振込や決済の記録、案内メールの宛先リスト、ホームページの会員一覧。それぞれが少しずつ違うと、次のようなことが起こります。

  • 退会した人が、ホームページの会員一覧に残っている
  • 会費を払ったのに、名簿では未納のまま
  • 再入会した人が、どの表にも正しく載っていない
  • 案内メールが、退会した人にも届いてしまう

原因の多くは、「どの記録を正しいとみなすか」が決まっていないことです。一覧やメールの宛先を、それぞれ別の表で手入れしていると、どこかで必ずずれます。正本を1つに決め、ほかはそこから作る形にすると、直す場所が1か所になります。

正本の候補は3つ

正本にするもの 向いている会 気をつけること
事務局の名簿の表 振込が中心で、会費の種類が少ない 共有の範囲と、どれが最新かの管理
会費の決済の記録 カードの年会費・月会費が中心 決済に使ったメールと、名簿のメールが違う人がいる
既製サービスの会員データ 入会・会費・会員ページを1か所にまとめたい 項目や区分が自分の会の決まりに合うか

会費制の会なら、「今年度の会費を払った人が会員」と決め、その状態を一覧や会員ページの元にするのがわかりやすい形です。一覧を「プロフィールの登録が済んだ人」で作っていると、解約した人が残り続けることがあります。

退会・休会・未納をどう表すか

会員の状態は、行を消したり色を塗ったりして表すのではなく、選択式(プルダウン)の「状態」の列と日付の列で表します。色は人によって意味が変わり、絞り込みや自動の処理にも使えないからです。

状態 表し方の例 会員一覧 案内メール 会員ページ
正会員(今年度納入済み) 状態=在籍、納入年度=今年度 載せる(本人の同意があれば) 送る 見られる
未納 状態=在籍、納入年度=前年度 会の規程で決める 督促の案内だけ送る 規程で決める
休会 状態=休会、休会開始日 載せない 会の判断で 見られない
退会 状態=退会、退会日 載せない 送らない 見られない

ポイントは、「未納になったら何日で、何を止めるか」を会の規程として先に決めておくことです。システムはその決まりどおりに動かすだけなので、決まりが無いと設定のしようがありません。再入会のときの入会金や会員番号の扱いも、あわせて決めておくと迷いません。

「載せる」と「知らせる」を分ける

会員の情報は、使い道によって必要な範囲が違います。1つの「有効」チェックで全部を決めると、「一覧には載せたくないが、案内は届けたい」といった場合に困ります。

使い道 決める列の例 出してよい項目
掲載用(ホームページの会員一覧) 「掲載する」チェック 氏名・所属・専門など、会が公開すると決めたものだけ
連絡用(事務局からの個別の連絡) 連絡用メール・電話 公開しない
配信用(お知らせの一斉メール) 「配信を止めた」日付 公開しない

あわせて、会費の決済に使ったメールアドレスは、連絡用とは別の列で持っておくと、決済の記録と名簿を突き合わせるときに助かります。勤務先の代表アドレスで払う人や、決済用と連絡用でアドレスを使い分ける人は珍しくありません。

名簿にメモの行を混ぜない

名簿の途中に「〇〇さんは確認中」「以下、旧会員」といったメモの行や、合計の行が入っていることがあります。人が見る分には便利ですが、ホームページの一覧やメールの宛先を名簿から作ると、メモの行が1人の会員として載ってしまうことがあります。逆に、別のタブにだけいる会員が漏れることもあります。

  • 1行に1人、1列に1つの情報を守る
  • メモは「備考」の列か、別のタブに書く
  • 合計や集計は、名簿とは別のタブで出す
  • 一覧や宛先を新しく作ったら、名簿の人数と突き合わせる

誰がどの列を触るか決める

名簿が壊れる原因の多くは、触ってはいけない場所を誰かが直してしまうことです。列を「手で入れる列」と「自動で埋まる列」に分け、担当を決めておきます。

列の種類 例 触る人
手で入れる列 掲載する・所属の表記・備考 事務局の担当者
自動で埋まる列 納入年度・決済日・配信停止日 誰も触らない
計算の列 一覧に出すか・要確認 誰も触らない

手で入れる列には色をつけ、自動の列は保護(編集できない設定)にしておくと安心です。元の名簿が大きく、別の担当者や運営会社が管理しているなら、元の名簿は読むだけにして、ホームページ用の表を別に作る方法もあります。元の名簿を壊す心配がなくなります。

名簿の表のつくり方や共有の注意点は、学会事務局の効率化|名簿と会費管理はスプレッドシートのままで で詳しくまとめています。

3つの選び方を比べる判断表

ここまで決まったら、どの形が合うかを考えます。どれが優れているということはなく、会の状況で決まります。

見るところ 既製の会員管理サービス 今の表を活かす形 個別に作る形
会員数 多くても、型に合えば回しやすい 少なめ〜中くらいの会で扱いやすい 規模より、流れが独自かどうかで決まる
会費の種類 一般的な年会費・区分なら合いやすい 種類が少なく、振込が中心 区分や割引が多く、型に収まらない
事務局の人数 交代が多くても、画面と手順が決まっている 表を見られる人が1人はいる 運用を一緒に見る相手(制作側)がいる
予算感 月々・年々の利用料が続く 初期の整理が中心で、続く費用は小さめ 最初に作る費用がかかり、保守の費用も要る
データの持ち主 サービス側に置く。書き出せるかを確認 会のアカウントに残る 会のアカウントに残す形にできる

迷ったときは、次のように考えると整理しやすくなります。

  • 既製サービスが合いやすい: 入会・会費のカード決済・会員ページ・案内メールを一度にそろえたい。会費や区分が一般的。表のしくみを見られる人がいない
  • 今の表を活かす形が合いやすい: 名簿はすでに回っていて、困っているのは書き写しや照合などのつなぎ目。会員数がそれほど多くない
  • 個別に作る形が合いやすい: 名簿から会員一覧・会員ページ・お知らせの配信までをつなぎたいが、会の決まりが既製サービスの型に合わない

個別に作る形でも、ゼロから全部を作る必要はありません。たとえば、River Techが制作した JIP 公式ホームページ では、名簿のスプレッドシートから会員一覧(約250名)をサイトへ自動で反映しています。入会からログイン、動画講義までを1つの流れにした例には CSAC Doctors Club があります。会員ページの作り方そのものは、会員限定ページを作る方法と選び方 で比べています。

業者・サービスに聞いておきたい質問

既製サービスでも、制作会社に作ってもらう場合でも、次の質問への答えを比べると違いが見えます。

  1. 「誰が会員か」は、どの記録で決まりますか?
  2. 退会・休会・未納は、どのように表せますか? 行は残りますか?
  3. 会員一覧に載せる人と、メールを送る相手を別々に決められますか?
  4. 会費の決済の記録と名簿は、どう突き合わせますか? 合わないときは誰が確かめますか?
  5. 事務局が触る画面や表はいくつありますか? 触ってはいけない場所はどこですか?
  6. 名簿や会員データを見られる人は、どう絞れますか?
  7. やめるとき、全項目を書き出して持ち出せますか?
  8. 年度が替わったとき、事務局は何をすればよいですか?

答えがあいまいな項目は、契約の前に確かめておくと、使い始めてからの「こんなはずでは」を減らせます。決済の受け付け方の比べ方は 入会申込と会費・参加費をオンラインで受け付ける方法 もご覧ください。

よくある落とし穴

  • 機能の一覧だけで選び、自分の会の退会・未納の決まりが表せるか確かめていない
  • 新しいサービスに移したあとも、古い名簿を別の人が更新し続けている
  • 移す前に、メモの行や重複した人を整理していない
  • 会員一覧の掲載と案内メールの送信を、同じ1つのチェックで決めている
  • 年度の切り替えで何を直すかを、誰も知らない

自分の会で確かめる3つの質問

  1. 「今、会員は何人ですか?」と聞かれたら、どの表を開いて答えますか?
  2. 先月退会した人は、会員一覧・案内メール・会員ページのすべてから外れていますか?
  3. 名簿のどの列を誰が直してよいか、事務局の全員が同じ答えを言えますか?

1つでも答えに迷うなら、システムを選ぶ前に正本と列の決まりを整える段階です。

どの形が自分の会に合うか判断がつかないときは、River Techの 学会・研究会の事務局向けのご案内 にある「棚卸し診断」(オンライン45分・15,000円(税込))で、今の名簿と事務作業をうかがい、「手間の地図」1枚にまとめてお渡しします。既製のサービスが合う場合は、正直にそちらをおすすめします。作る場合も、データは団体様のアカウントに残る形が前提です。

よくある質問

会員管理のソフトやサービスを比べるとき、最初に何を見ればよいですか?

機能の多さより先に、「誰が会員か」をどこで決めるか(正本)と、退会・休会・未納をどう表せるかを確かめてください。ここが自分の会の決まりと合わないと、どのサービスでも手作業の確認が残ります。

スプレッドシートの会員名簿は、どうなったら限界ですか?

人数よりも、「どれが最新の名簿かわからない」「同じ人が別の表に別の状態で載っている」「表のしくみを見られる人がいない」といった状態が続くかどうかが目安です。人数が少なくても、会費の種類が多く事務局が交代制なら、表だけでは回りにくくなることがあります。

既製の会員管理サービスに移ると、今の名簿はどうなりますか?

多くの場合、今の名簿を取り込んで使い始めます。その前に、1行に1人になっているか、退会者やメモの行が混ざっていないかを整えておくと移しやすくなります。やめるときに全項目を書き出せるかも、契約前に確かめておくと安心です。

退会した会員の行は、名簿から消してもよいですか?

消さずに、状態を「退会」にして退会日を残すことをおすすめします。再入会や過去の会費の問い合わせに答えられ、会員一覧や案内メールからは状態の列で外せます。

学会・研究会の事務局の方へ

今のやり方を活かして、事務局の手間をひとつずつ減らします。

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