学会のホームページ制作会社の選び方|公開後の運用で差がつく8つの質問
学会・研究会・協会のホームページを制作会社に頼むとき、どこを見て選べばよいのかをまとめました。結論から言うと、制作会社の差は公開した日ではなく、公開したあとの運用で出ます。この記事では、最初の相談で聞いておきたい8つの質問を、「なぜ聞くのか」「よい答えの例」とあわせて紹介し、注意したい答えと、答えを表で比べる方法まで順に説明します。
結論:差は「公開したあと」に出る
デザインの見本や実績の数は、選ぶときに目に入りやすいところです。ただ、学会や研究会のホームページで困りごとが出るのは、たいてい公開したあとです。
- 名簿の表を、いつの間にか誰でも開ける状態で共有していた
- 公開前の確認用のサイトが残っていて、古い申込フォームに申込が届いた
- 年度が替わったら、会員ページに入れる人の切り替え方が誰にもわからなかった
- 制作会社との契約を終えたら、ドメイン(ホームページの住所)が引き取れなかった
どれも、制作の腕前とは別の話です。だからこそ、相談の段階で「公開したあと、どうなりますか」と聞いておくことで、合う会社かどうかを見分けやすくなります。
なぜ学会・研究会は、公開後に差が出やすいのか
学会・研究会の事務局は、大学の医局の秘書の方、講座の先生、病院の技師の方などが、本業と兼ねて担当していることが多くあります。担当が数年ごとに替わったり、世話人の先生の持ち回りで更新したりする会もあります。
さらに、学会のホームページは「載せて終わり」ではありません。会員の入会・退会、会費の年度、学術集会の案内、役員の交代など、毎年決まって動くものがあります。公開されている制作の依頼を見ていても、「今の管理者がいなくなるので、続けられる形にしたい」「持ち回りの先生でも投稿できるようにしたい」といった、運用そのものを求める依頼が目立ちます。こうした依頼は、見た目の提案だけでは決め手になりにくいようです。
つまり、学会のホームページ制作会社を選ぶときは、「作れるか」に加えて「事務局が回し続けられる形にできるか」を確かめることが大切です。
公開後の運用で差がつく8つの質問
1. 名簿の共有範囲は、どう設定しますか?
なぜ聞くのか:会員名簿には、住所・電話・勤務先、場合によっては生年月日まで入っています。制作中に事務局・理事・制作会社のあいだで表をやり取りするうちに、「リンクを知っている人なら誰でも編集できる」設定になってしまうことは、一般によくある落とし穴です。
よい答えの例:「名簿の共有は、事務局の決まった方のアカウントだけにします。私たちは作業のあいだだけ権限をいただき、終わったら外します。ホームページに出す項目は氏名・所属など最小限にして、生年月日は表示しません」
2. パスワードや鍵の受け渡しは、どうしますか?
なぜ聞くのか:ホームページには、サーバー、ドメイン、記事の管理画面、LINE公式アカウント、メールなど、たくさんのパスワードや「鍵」(ほかのサービスとつなぐための合言葉)が関わります。メールやチャットに書いてしまうと、その履歴が残り続けます。
よい答えの例:「パスワードはメールやチャットに書かず、共有用の安全な方法でお預かりします。もし貼ってしまった場合は、作り直していただくようご案内します。アカウントは最初から団体の名義で作ります」
3. 公開前の確認用サイトは、公開後どうしますか?
なぜ聞くのか:制作中は、本番とは別に確認用のサイトを作ることがよくあります。これが公開後も残っていると、検索結果に本物と並んで出たり、古い申込フォームに申込が届いて誰も気づかなかったりします。
よい答えの例:「確認用のサイトは検索に出ない設定で作り、公開したら閉じるか、本番のサイトへ転送します。閉じたことはご報告します」
4. 旧サイトのアドレスは、新しいページへ転送しますか?
なぜ聞くのか:会員のブックマーク、ほかの学会からのリンク、検索結果、過去の案内メールには、旧サイトのアドレスが残っています。転送しないと、それらがすべて「ページが見つかりません」になります。
よい答えの例:「旧サイトの主なページを一覧にして、新しいページへ転送(引っ越し先の案内)を設定します。http や www つきのアドレスも、正式なアドレスにそろえます。旧サイトのPDFや写真は、止める前に保存します」
リニューアルのときに確かめたい点は「学会・研究会のホームページをリニューアルする前のチェックリスト11項目」にもまとめています。
5. 更新する人が見る場所は、いくつになりますか?
なぜ聞くのか:機能が増えるほど、事務局が触る画面も増えがちです。兼務の担当者や持ち回りの先生にとっては、場所が多いほど迷い、引き継ぎもむずかしくなります。
よい答えの例:「お知らせは記事の管理画面、会員の情報は今お使いの名簿の表、の2か所までにします。触る場所と触らない場所を手順書に書き、新しい入力画面は、事務局で必要になってから足します」
6. 自動返信やお知らせメールの送信元は、どのアドレスですか?
なぜ聞くのか:申込の自動返信や会員へのお知らせの送信元がばらばらだと、会員からの返信が迷子になり、迷惑メールに入りやすくもなります。一斉に送るメールでは、テストのつもりが会員全員に届いてしまう、という事故も一般に起こりえます。
よい答えの例:「送信元と返信先は、事務局のアドレス1つにそろえます。ドメインになりすまし対策の設定(SPF・DKIM・DMARC)を入れ、公開前に事務局宛てに実物を送って文字化けがないか確かめます。テスト送信は事務局宛てだけにし、一斉に送るメールには配信停止の方法を入れます」
7. 年度が替わったら、何をすればよいですか?
なぜ聞くのか:学会は年度で動きます。会員ページに入れる人や会員一覧に載る人を「今年度の会費が済んだ人」で決めていると、年度が替わった日の扱いを決めておかないと困ります。役員の交代、新しい学術集会のページ、LINEの無料プランの配信数の上限なども、年に一度は見直したいところです。
よい答えの例:「年度替わりにすることを1枚の手順にしてお渡しします。最初の年度替わりは一緒に確認します」
8. 契約が終わったら、データはどこに残りますか?
なぜ聞くのか:ドメインやサーバー、管理画面のアカウントが制作会社の名義になっていると、別の会社へ移るときに引き取れないことがあります。サーバーの中にしかないデータ(登録者や送信の記録など)があれば、その控えの取り方も決めておく必要があります。
よい答えの例:「ドメイン・サーバー・各サービスのアカウントは団体の名義で作り、データは団体のアカウントに残ります。契約が終わっても、そのままお使いいただけます。どこに何があるかの一覧もお渡しします」
注意したい答え
次のような答えが返ってきたら、もう一歩くわしく聞いてみてください。
- 「パスワードはメールで送っていただければ大丈夫です」
- 「名簿はリンクで共有していただければ結構です」
- 旧サイトや確認用サイトの話をすると、「そのうち消えます」で終わる
- 「管理画面で何でもできます」とだけ言い、誰が何を更新するのかを聞いてこない
- ドメインは「当社で取っておきます」と言い、名義の話が出ない
- 見積もりに、手順書や公開後の対応が一言も書かれていない
- 小さな会で既製のサービスでも足りそうなのに、一から作る提案しか出てこない
どれも、その場ですぐに困るわけではありません。困るのは、担当が替わったときや、年度が替わったときです。
答えを表で比べる
2〜3社に相談するなら、答えを次のような表に書き込むと比べやすくなります。印をつける目安は、○=具体的な手順と担当まで答えた、△=方針はあるが「誰が・いつ」があいまい、×=考えていない・「大丈夫です」だけ、です。
| 質問 | A社の答え | 印 | B社の答え | 印 |
|---|---|---|---|---|
| 1. 名簿の共有範囲 | ||||
| 2. パスワードや鍵の受け渡し | ||||
| 3. 確認用サイトの後始末 | ||||
| 4. 旧URLの転送 | ||||
| 5. 更新する人が見る場所の数 | ||||
| 6. メールの送信元 | ||||
| 7. 年度替わりの手順 | ||||
| 8. 契約後のデータの行き先 | ||||
| 答えを書面に残してくれるか |
○の数だけで決める必要はありません。ただ、×が多い会社は、公開後に事務局の手間が増えやすいと考えてよいでしょう。費用の比べ方は「研究会・学会のホームページ費用は何で決まる?」で、名古屋・愛知の団体向けの会社選びは「名古屋で会員制サイトの制作を頼む前に」で紹介しています。
医療系の学会で、特に気をつけたいこと
医療系の学会・研究会のホームページは、会員の先生だけでなく、患者さんやご家族が見ることもあります。相談窓口を置くなら「診断や治療の代わりではない」といった線引きを、わかりやすい場所に書いておくと安心です。また、会員の勤務先や専門を載せる場合は、載せる項目を会で決め、本人が望まない情報は出さないようにします。こうした点まで一緒に考えてくれるかも、選ぶときの目安になります。
自分の会で先に確かめる3つの質問
制作会社に聞く前に、まず事務局の中で次の3つを確かめておくと、相談がぐっと進めやすくなります。
- 今のホームページのドメインとサーバーは、誰の名義で、ログイン情報はどこにありますか?
- 会員名簿の表は、今だれと共有していますか?
- 来年度、ホームページで変えなければならないもの(役員、会費、学術集会)は何ですか?
答えがわからない項目があっても大丈夫です。わからないこと自体が、制作会社に最初に伝えるべき情報になります。
今のサイトを8つの質問で見てみる
River Techでは、学会・研究会の事務局の方に「ホームページの改善案」をご用意しています。旧URLの転送、https(安全な通信)になっているか、確認用のサイトが検索に出ていないか、メールの送信元など、外から確かめられる点を中心に、この8つの視点で今のサイトを見て、直すとよい点を1枚にまとめてお渡しします。今の名簿ややり方を活かすこと、既製のサービスが合う場合は正直におすすめすること、データは団体のアカウントに残すことを大切にしています。くわしくは「学会・研究会の事務局の方へ」のページをご覧ください。打ち合わせはオンラインでも進められるので、全国の団体からご相談いただけます。
よくある質問
学会のホームページ制作は、地元の制作会社に頼んだ方がよいですか?
地元であることは安心材料のひとつですが、必須ではありません。打ち合わせはオンラインで進めることも多く、それよりも公開後の運用について具体的に答えられるかどうかの方が、使い続けるうえでは大きな違いになります。
制作会社にこの8つの質問をするのは、失礼になりませんか?
失礼にはなりません。公開後の運用を考えている会社ほど、こうした質問には具体的に答えられます。答えは見積書や提案書に書いてもらうと、あとで確かめやすくなります。
見積もりが安い会社と高い会社では、どちらを選べばよいですか?
金額だけで比べず、公開後の手順書、年度替わりの対応、旧URLの転送などが見積もりに含まれているかを見てください。安く見えても、公開後に毎回の依頼費がかかる形だと、数年で差が逆転することがあります。
小さな研究会でも、制作会社に頼む必要がありますか?
会員数が少なく、載せる情報も多くない場合は、既製のホームページ作成サービスや会員管理サービスで足りることもあります。そうした場合に、正直にそう教えてくれるかどうかも、相談相手を選ぶ目安になります。