医療系の学会・研究会のホームページの注意点|症例写真と患者情報

医療系の学会・研究会公開 River Tech合同会社

医療系・歯科系の学会や研究会のホームページは、ふつうの団体のサイトより気をつける点が少し多くなります。会員の先生だけでなく患者さんやご家族も見ること、症例写真など患者さんの情報を扱うこと、会員の医院への案内が広告と受け取られうること、の3つが理由です。この記事では、事務局が公開前に確かめたい点を項目ごとにまとめます。

このテーマのご案内:医療系・歯科系の学会・研究会の方へ

結論:「だれが見るページか」を先に分ける

  • 一般の方が見るページ:会の目的と活動、学術集会の案内、相談窓口。症例写真や患者さんがわかる情報は原則として置かない
  • 会員の先生が見るページ:症例を含む講演資料や録画、会員向けのお知らせ
  • 会員の医院への案内:載せる項目を決め、本人の了承と、確かめたリンクだけを載せる

医療広告・個人情報・著作権のように法律の判断がかかわる部分は、この記事では「気をつける点」までを書きます。最終的な判断は、厚生労働省の資料、所属学会の指針、会の顧問や法律の専門家に確認してください。

ふつうの団体サイトと何が違うのか

項目 ふつうの団体 医療系の学会・研究会
見る人 会員と関係者 会員の先生に加えて、患者さん・ご家族、検索で来た一般の方
写真 行事の写真が中心 症例写真・口腔内写真・検査画像など、患者さんの情報を含むもの
会員の紹介 名前と所属 医院名・所在地・医院サイトへのリンク(受診先の案内になりうる)
講演資料 配って終わり 症例、他の人の図表、患者さんの情報の写り込みを含みやすい
問い合わせ 事務的な質問 症状や治療についての相談が届くことがある

症例写真・患者さんが写った写真

「顔が写っていない」だけでは足りない

患者さんがわかる手がかりは、顔のほかにもあります。

  • 画像のすみに入った氏名・番号・撮影日、施設名の入った撮影用のボード
  • ほくろ・傷あと・装身具など、特徴のある部分
  • レントゲンやCTの画像に焼き込まれた文字
  • 写真のファイルに残る撮影の情報(撮影日時や機種など)や、患者さんの名前を付けたファイル名
  • 本文に書いた年齢・地域・時期の組み合わせ

載せる前のチェックリスト

  • [ ] 患者さんの同意がある(何に使い、どこまで公開するかを含めて)
  • [ ] 同意の記録が書面やメールで残っている
  • [ ] 画像の文字とファイルの撮影情報を消した
  • [ ] 一般公開ではなく、会員限定で足りないか検討した
  • [ ] 写真を出した先生本人が、公開前の画面を確認した
  • [ ] 公開をやめるときに、だれが外すかが決まっている

多くの医学系の学会は、症例報告や学会発表での患者さんのプライバシー保護について指針を定めています。自分の会に決まりがなければ、関係する学会の指針や、個人情報保護委員会と厚生労働省が出している医療・介護関係事業者向けのガイダンスを参考に、会としての扱いを決めておきましょう。

医療広告ガイドラインとの関係

医療機関のホームページは医療法の広告規制の対象とされ、厚生労働省の「医療広告ガイドライン」に、載せてよいこと・いけないことの考え方が示されています。たとえば治療の前後を比べる写真(ビフォーアフター)は、治療の内容・費用・主なリスクや副作用などの説明を添えずに載せることは認められない、とされています。

学会や研究会のサイトは医療機関のサイトではありません。ただ、広告にあたるかは、患者さんを受診に誘う意図があるか(誘引性)、どの医療機関かがわかるか(特定性)から考えるとされています。団体のサイトでも、書き方によっては特定の医院の広告と見られる可能性があります。

境目になりやすい書き方

書き方 気をつけたい理由
会員の医院を「おすすめ」「名医」と紹介する 比較や誇大な表現と受け取られうる
会の認定と医院のリンクを並べ、「この治療はこちらで」と誘う 特定の医院への受診の誘いに見える
一般向けのページに会員医院の症例の前後写真を載せる ビフォーアフターの扱いにかかわりうる
会員医院の患者さんの声を載せる 体験談の扱いにかかわりうる
五十音順や地域順に医院名と所在地を並べ、リンクするだけ 比較的中立な並べ方。ただしリンク先の医院サイトは各医院の責任で整える必要がある

迷ったときは、厚生労働省のウェブサイトにある医療広告規制のページ(ガイドライン本文、Q&A、ウェブサイトの事例をまとめた資料)を確認し、会の顧問や法律の専門家に相談してください。

会員の医院一覧とリンク

会員の先生にとって、会の一覧から自院のサイトへ案内されることは、入会の価値の一つになることがあります。一方で、一覧の間違いは会の信用にもかかわります。

間違ったリンクより空欄

リンクを入れる前に、次の順で確かめます。

  1. リンク先が医院の公式サイトか(予約サイトや口コミサイト、SNSを入れるかは会で決める)
  2. ページ上の医院名と所在地が名簿と一致するか(同じ名前の別の医院もあります)
  3. 閉院や移転をしていないか
  4. 確かめられないものは空欄にして、本人から申し出てもらう

掲載の同意と、載せる項目

名簿の情報は事務連絡のために届け出てもらったものです。載せる項目(氏名・医院名・市区町村・医院サイトなど)を会で決め、入会申込書に掲載の可否の欄を設けるか、一度まとめて確かめましょう。携帯電話やメールアドレス、生年月日、自宅の住所は載せません。

更新のしかた

一覧は手で作り直すのではなく、名簿を「正本(いちばん正しい元の表)」にして、そこから作ると食い違いが起きにくくなります。退会や会費の未納で外れるようにしておき、年に一度はリンク切れを確かめます。考え方は「学会の会員管理システムの選び方」にまとめています。JIP 公式ホームページでは、名簿の表から会員一覧(約250名)をサイトへ自動で反映しています。

講演資料・動画の扱い

講演の録画やスライドを載せるときは、次の3点を確かめます。

  • 講演者の同意:公開する範囲(会員だけか)、期間、資料も載せるか
  • スライドの著作権:他の人の論文の図表やインターネット上の画像が入っていないか
  • 患者さんの情報の写り込み:画像のすみの文字、質疑応答で話された症例の内容

利益相反(COI)の開示など、会の規程で決まっている表示があれば、それも残します。資料をダウンロードできるようにするかも決めておきましょう。手順は「学会・研究会の講演録画を会員限定でオンデマンド配信する方法」で詳しく紹介しています。

一般の方向けの相談窓口・ホットライン

野口歯科学研究所 歯科部会は、歯科治療技術の検討や歯科ホットライン、技術資料の公開を行う部会で、River Techはそのホームページと相談窓口を制作しました。相談窓口を置くなら、次の点を入口のわかりやすい場所に書いておきます。

  • [ ] 診断や治療の代わりではないこと
  • [ ] 急ぐときは医療機関や救急へ連絡してほしいこと
  • [ ] 受付時間と、返答までの目安
  • [ ] だれが答えるか(会員の先生か、事務局か)
  • [ ] 相談内容をどこに記録し、だれが見て、何に使うか(プライバシーポリシーにも書く)
  • [ ] 写真や検査結果を受け取るか。受け取るなら保存場所と消す時期
  • [ ] 会員の医院を紹介する場合、その決め方
  • [ ] 会員の先生からの相談と、一般の方からの相談の入口の違い

会員限定と一般公開の線引き

情報 一般公開 会員限定 注意
会の目的・役員・会則 ○ ― 役員交代のたびに更新
学術集会・講演会の案内 ○ ― 講師名や演題は本人の了承を
講演の録画・スライド △ ○ 一般公開は講演者が了承したものだけ
症例写真・検査画像 × ○ 同意と匿名化のうえで
抄録集 △ ○ 学会の方針と著者の了承による
会員の医院一覧 ○ ― 本人が掲載を了承した項目だけ
会員名簿(連絡先・生年月日) × × 事務局だけが扱う
会費・会員向けのお知らせ ― ○ ―
相談窓口の案内 ○ ― 線引きの文を添える

○は置いてよい場所、△は条件つき、×は置かない場所の目安です。会の規程や指針に合わせて調整してください。

この表を自分の会のページに当てはめると、直す場所が見えてきます。River Techでは、医療系の学会・研究会の事務局向けに、今のホームページを見て直す点をまとめる「ホームページの改善案」を医療系の学会・研究会のご案内に載せています。名簿や申込まで含めて整理したい場合は、棚卸し診断(オンライン45分・15,000円(税込)・「手間の地図」1枚)もご利用いただけます。

よくある落とし穴

  • 過去の大会ページに残ったPDF:何年も前の抄録や資料に、症例画像が入ったまま一般公開されている
  • 「検索に出ない」を「非公開」と思い込む:検索に出なくても、URLを知っていれば開けます
  • 会員限定のつもりの共通パスワード:退会した方も入れたままになりがちです。作り方は「学会・研究会のホームページに会員限定ページを作る方法」をご覧ください
  • 退会した先生が一覧に残る:名簿と一覧を別々に直していると起きやすくなります

自分の会で確かめる3つの質問

  1. 一般の方が見られるページ(過去の大会ページやPDFも含む)に、症例写真や患者さんがわかる情報はありませんか?
  2. 会員の医院一覧のリンクは、いつ、だれが確かめましたか? 退会した先生が残っていませんか?
  3. 講演資料や録画を載せるとき、講演者の同意と画像の確認を、だれがどの順で行っていますか?

答えに詰まる項目があれば、そこが最初に手を入れる場所です。

River Techの例

  • JIP 公式ホームページ:歯科医師の会員制医療教育団体の公式ホームページ。名簿の表から会員一覧(約250名)を自動で反映し、会員だけが見られる講義動画のページと申込フォームを備えています
  • CSAC 公式サイト:グアム大学で行う、美容医療に特化した解剖学研修コースの公式サイトです
  • CSAC Doctors Club:解剖実習を中心に医師が集まる会員制の学術コミュニティのサイト。入会・ログイン・ウェビナーや動画講義をひとつの流れにしています
  • 野口歯科学研究所 歯科部会:歯科ホットラインや技術資料の公開を行う部会のホームページと相談窓口です

よくある質問

学会や研究会のホームページも、医療広告ガイドラインの対象になりますか?

一概には言えません。ガイドラインでは、患者さんを受診に誘う意図があるか(誘引性)、どの医療機関かがわかるか(特定性)から広告にあたるかを考えるとされており、団体のサイトでも書き方によっては特定の医院の広告と見られる可能性があります。厚生労働省のガイドラインとQ&Aを確認し、迷う場合は法律の専門家にご相談ください。

症例写真は、顔が写っていなければ載せてよいですか?

顔が写っていなくても、撮影日や施設名、特徴のある部位、画像に焼き込まれた文字などから患者さんがわかることがあります。同意の範囲と匿名化のしかたは、所属学会の指針や関係するガイダンスに沿って会で決め、迷う場合は専門家に確認してください。一般公開ではなく会員限定のページに置くのも一つの方法です。

会員の医院一覧は、会員名簿からそのまま作ってもよいですか?

名簿の住所や連絡先は、事務連絡のために届け出てもらった情報で、ホームページへの掲載まで了承しているとは限りません。載せる項目を決めて本人に掲載の可否を確かめ、退会した方が外れる作り方にしておくと安心です。

一般の方向けの相談窓口には、最低限なにを書けばよいですか?

診断や治療の代わりではないこと、急ぐときは医療機関や救急へ連絡してほしいこと、受付時間と返答の目安、だれが答えるか、相談内容の扱い方の5つです。写真や検査結果を受け取るかどうかも、先に決めておきましょう。

医療系・歯科系の学会・研究会の方へ

症例写真や患者さんの情報に気を配りながら、会員サイトと事務の手間を整えます。

会員の先生方への案内、会員限定の講義動画、セミナーの申込、名簿と連動する会員一覧まで。歯科医師・医師の団体のサイトをつくってきた経験をもとに、今のサイトの改善案を1枚にまとめてお渡しすることもできます。