学会・研究会の講演録画を会員限定でオンデマンド配信する方法
学会や研究会の講演を録画して、会員の方だけに後から見てもらいたい。そう考えたとき、事務局が決めることは「どこに置くか」「だれの許可をとるか」「どう並べるか」の3つです。この記事では、配信のしかたの選び方、講演者の同意のとり方、会員が探しやすいアーカイブの整え方、開催後の作業チェックリストを順にまとめます。
結論:「だれが見られるか」を名簿と結びつけられるかで選ぶ
先に結論を書きます。
- 少人数・短期間なら、動画サービスの限定公開や非公開設定、ウェビナーツールの録画共有で十分なことが多いです
- 会員の入れ替わりがある・退会した方に見られたくないなら、会員ページ(ログインした人だけが入れるページ)の中に動画を置く方法が向いています
- どの方法でも、公開前に講演者の同意をとることと、スライドに載せてはいけない情報がないか確かめることは欠かせません
配信の方法そのものより、「見られる人」を名簿とどう結びつけるかで、事務局の手間が大きく変わります。
会員限定で配信する4つの方法
よく使われる方法を4つ、比べてみます。各サービスの機能や料金は変わることがあるため、使う前に各サービスの最新の仕様をご確認ください。
| 方法 | 見られる人の絞り方 | 向いている場面 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|---|
| YouTubeの限定公開 | URLを知っている人 | 少人数に、短い期間だけ見てもらう | URLが転送されると会員以外も見られる |
| 動画サービスの非公開設定(Vimeoなど) | パスワード、埋め込み先の指定など(プランによる) | 会員ページがまだない段階 | パスワードの配り直しが必要になる |
| ウェビナーツールの録画共有 | 共有リンク、パスコード、期限など(ツールによる) | 開催直後に参加者へ見逃し配信をする | 保存期間や容量に上限があることが多い |
| 会員ページに埋め込む | ログインした会員だけ | 講演が毎回たまっていく・会員の入れ替わりがある | 会員ページの仕組みを用意する必要がある |
1. YouTubeの限定公開
検索や一覧には出ず、URLを知っている人だけが見られる設定です。無料で手軽に始められるのが良い点です。一方で、一般に「URLを知っていればだれでも見られる」ため、会員限定というより「探しても見つからない」という性格の公開です。退会した方がURLを控えていれば、そのまま見られます。
2. 動画サービスの非公開設定
動画サービスによっては、パスワードをかけたり、決めたホームページの中でしか再生できないようにしたり(埋め込み先の制限)できます。こうした機能は有料プランで使えることが多いため、プランの内容を確かめてください。パスワード方式の場合、会員が入れ替わるたびにパスワードを変えて、全員に配り直す作業が発生します。
3. ウェビナーツールの録画共有
オンラインで開催した講演なら、ウェビナーツール(オンライン講演会の道具)の録画機能をそのまま使う方法もあります。開催直後に参加者へ「見逃し配信」として送るには手早い方法です。ただ、ツール側の保存期間や容量に上限があることが多く、何年分も貯めておくアーカイブには向かない場合があります。
4. 会員ページに埋め込む
動画は動画サービスに置き、その再生画面を会員ページの中に埋め込む方法です。ログインした会員だけがページに入れるため、「見られる人」を名簿と結びつけられます。名簿をもとに見られる人を決める仕組みにしておけば、退会や未納の方が自動で見られなくなるようにもできます。会員ページのつくり方は、会員制サイト・動画配信でもご紹介しています。
どれを選ぶかの目安
- 会員が数十人で入れ替わりも少ない → 1か2
- オンライン開催が中心で、見逃し配信だけしたい → 3
- 講演が毎回たまる、名簿の入れ替わりがある、パスワードの配り直しが負担 → 4
既製の会員管理サービスに動画配信の機能がついていて、それで足りるなら、そちらを使うのも良い選択です。
公開の前に:講演者の同意とスライドの中身を確かめる
録画を配信するときにいちばん大切なのは、配信の設定よりも「公開してよい内容か」です。
講演者から同意をとる項目
講演の依頼の段階で、次の項目を伝えておくと後が楽になります。
- [ ] 録画すること
- [ ] 公開する範囲(会員だけ、参加者だけ、など)
- [ ] 公開する期間(期限を決めるか、残し続けるか)
- [ ] 配布資料(スライドのPDFなど)も載せるか
- [ ] 一部を編集で切る(質疑応答を外す、など)場合があること
- [ ] 公開をやめてほしいときの連絡先
同意は、後から確認できるようにメールや書面で残しておくと安心です。
スライドの著作権
スライドの中に、他の人の論文の図表や、インターネット上の写真が使われていることがあります。会場で一度見せることと、録画として長く公開することでは、扱いが変わる場合があります。出典の書き方や引用の範囲に不安があるときは、講演者に確認し、必要に応じて該当のページを差し替えてもらいましょう。判断に迷う場合は、専門家への確認をおすすめします。
医療系の学会・研究会で特に気をつけたいこと
- 症例の写真や検査画像に、患者さんを特定できる情報(氏名、顔、日付、施設名など)が写っていないか
- 会場の質疑応答で、参加者の顔や名前が映り込んでいないか
- 講演中の口頭の説明に、個人が特定できる話が含まれていないか
会場では問題がなくても、録画は何度も見返され、長く残ります。医療系の場合、所属先や学会の指針に沿って扱う必要があるため、公開前に講演者ご本人に確認してもらう流れを決めておくとよいでしょう。
会員が見つけられるアーカイブの整え方
動画が増えてくると、「どこにあるかわからない」という問い合わせが増えます。次の点を揃えておくと、会員が自分で探せるようになります。
- タイトルの書き方を決める:「開催日|講演タイトル|講演者名」のように、毎回同じ順番にする
- 開催回ごとにまとめる:「第○回 研究会」の単位で、動画と配布資料を同じ場所に置く
- テーマで絞り込めるようにする:分野やテーマの印(タグ)を数種類だけ決めて、つけておく
- 配布資料を動画のすぐ下に置く:資料だけ別のページにすると、探す手間が増えます
- 公開期間を書く:期限がある動画は「○月○日まで公開」と書いておく
- 新着を一番上に出す:最新の講演がすぐ見つかるようにする
開催後の事務局の作業チェックリスト
講演会や学術集会のたびに、次の順番で進めると漏れが減ります。
- 録画ファイルと配布資料を、決めた保存先(団体のアカウント)に集める
- 講演者の同意の内容(公開範囲・期間・資料の有無)を確認する
- 患者さんの情報や、許可のない図表が映っていないかを確かめ、必要なら編集する
- 講演者本人に、公開前の確認をお願いする
- 動画サービスにアップロードし、公開の設定(限定公開・非公開・埋め込み先など)を確かめる
- 会員ページやアーカイブに、決めた書き方のタイトルで載せ、配布資料を添える
- ログインしていない状態で開き、会員以外に見えていないかを確かめる
- 会員へ公開のお知らせを送る
- 公開期限がある場合は、終了日を予定表に入れておく
7番の「会員以外に見えていないか」の確認は、特に忘れずに行ってください。設定を一つ間違えるだけで、だれでも見られる状態になることがあります。
River Techでの例
River Techがつくったサイトから、会員限定の動画にかかわるものをご紹介します。
- JIP 公式ホームページ:歯科医師の会員制医療教育団体の公式ホームページです。会員だけが見られる講義動画のページを備え、名簿のスプレッドシートから会員一覧(約250名)をサイトへ自動で反映しています
- CSAC Doctors Club:医師が集まる会員制の学術コミュニティのサイトです。入会、ログイン、ウェビナー・動画講義までを、ひとつの流れにしています
- 研究会サイトのデモ:River Techが提案用につくった、架空の研究会のデモです。講演の録画・配布資料・会員へのお知らせを並べた会員ページの見本を、ボタンで切り替えて見られます
学会・研究会の事務局向けには、会員ページのほかに、申込の受付や名簿と連動するホームページもまとめて事務局向けのご案内に載せています。いま使っている名簿ややり方を活かして、いちばん困っている作業から一つずつ始められます。
よくある質問
YouTubeの限定公開だけで、会員限定と言えますか?
一般に、限定公開はURLを知っている人なら会員でなくても見られる設定です。URLが転送されると広がるおそれがあるため、少人数で短い期間だけ共有する場合に向いています。退会した方に見られたくない場合は、会員ページの中で配信する方法を検討してください。
講演者の同意は、口頭でもよいですか?
後から確認できるよう、メールや書面で残すことをおすすめします。公開する範囲(会員だけか)、期間、配布資料も載せるかを具体的に書いて、返信で同意をもらう形にすると、事務局の負担も小さく済みます。
録画の保存や画面録画を、完全に防ぐことはできますか?
一般に、視聴している画面そのものの録画まで完全に防ぐ方法はありません。そのため、配信の設定で守ることに加えて、公開してよい内容だけを載せること(患者さんの情報や、許可のない図表を外すこと)がいちばんの対策になります。
小さな研究会で、動画が年に数本しかありません。それでも会員ページは必要ですか?
本数が少なく、見る人も決まっている場合は、動画サービスの非公開設定やウェビナーツールの録画共有で足りることも多いです。名簿の入れ替わりが多い、退会した方に見られたくない、本数が増えてきた、という場合に会員ページを検討するとよいでしょう。