学術集会の参加登録をオンラインにする前に決める10のこと

学会・研究会の事務局公開 River Tech合同会社

学術集会の参加登録をオンラインにするとき、最初に決めたいのはシステムではなく、参加の区分や参加費、締め切り、返金といった「登録のルール」です。この記事では、学会・研究会の事務局の方向けに、システムを選ぶ前に決めておきたい10のことを判断表にまとめ、開催までの準備の流れと、当日受付を減らす考え方を紹介します。

このテーマのご案内:学会・研究会の事務局の方へ(事務局の仕組みづくり)

結論:ルールを1枚にしてから、システムを選ぶ

  1. 参加の区分と参加費を表にする。 会員・非会員・学生、会場・オンラインの組み合わせが、そのまま登録画面の選択肢になります
  2. 締め切りと当日登録の扱いを決める。 事前登録が増えるほど、当日の受付は短くなります
  3. 会員番号で名簿と照合するかを決める。 会員価格を設けるなら、誰が会員かを確かめる方法が要ります
  4. 返金・証明書・単位の扱いを、申込ページに書ける形にする
  5. 終了後に残すデータを決める。 参加者名簿・アンケート・オンデマンド配信の記録は、次の開催の材料になります

これが1枚にまとまっていれば、既製の参加登録サービスでも、ホームページに組み込む形でも、「この条件を満たせるか」で比べられます。ルールが決まらないまま選ぶと、あとから「この区分が作れない」「年会費を一緒に払えない」といった手作業が残りがちです。

なぜ「システムより先にルール」なのか

紙・FAX・メールでの申込と当日の現金払いは、事務局の方が一件ずつ判断することで回っています。学生かどうか、会員かどうか、締め切りを過ぎた申込を受けるかどうか。その判断は、多くの場合、担当の方の頭の中にあります。

オンラインにすると、その判断を画面の選択肢と自動のメールに置き換えることになります。決まっていないことは画面に書けないので、結局は問い合わせとして事務局に戻ってきます。システムの機能を比べる前に、まず「人が毎回判断していたこと」を書き出すのが近道です。

決めておく10のこと(判断表)

# 決めること 決める内容の例 決めないと起きやすいこと
1 参加の区分 会員・非会員・学生・招待・座長や演者、会場参加・オンライン参加 区分が足りず、備考欄やメールでの個別対応が増える
2 参加費と支払い方法 区分ごとの参加費、早期登録の有無、カード・振込・当日払いのどれを受けるか 支払い方法ごとに確認の手順が分かれ、入金の照らし合わせが複雑になる
3 年会費の同時支払い 未納の会員が、参加登録と一緒に年会費を払えるようにするか 会員価格で登録した未納の方への個別の連絡が残る
4 領収書・参加証明書・単位 誰が・いつ・どの形で出すか。単位の登録に必要な記録 開催後に証明書の依頼が個別に届き、確かめる記録がない
5 締め切りと当日登録 早期・通常の締め切り、当日登録を受けるか、当日の参加費 当日の受付に行列ができ、現金の管理が残る
6 キャンセル・返金 締め切り日、返金の有無、オンライン参加への切り替えを認めるか 個別の交渉になり、判断が人によって変わる
7 名簿との照合 会員番号を入れてもらうか、照合の時期、照合できない方の扱い 非会員が会員価格で登録する、会員が非会員として登録する
8 個人情報 聞く項目、利用目的、誰が見られるか、いつ消すか 必要以上の項目を集め、共有の範囲もあいまいになる
9 当日受付の流れ 受付で確かめること、名札・資料の渡し方、当日払いの扱い オンラインにしたのに受付の作業が減らない
10 終了後のデータ 参加者名簿、アンケート、オンデマンド配信の視聴の記録、翌年への引き継ぎ 毎年ゼロから作り直し、過去の参加者に案内を送れない

以下、迷いやすいところを補足します。

1〜3. 区分・参加費・年会費

区分は「誰が」と「どこで」の掛け合わせ

区分は、「会員・非会員・学生」などの誰がと、「会場・オンライン」のどこでの掛け合わせです。3つと2つなら6通りになります。すべてに別の参加費をつけると、登録画面も入金の確認も複雑になるので、「オンラインは会場と同じ参加費」「学生は会員・非会員を問わず同じ」のように、まとめられるところはまとめるのがおすすめです。座長・演者・招待者のように参加費がかからない方は、一般の登録と分けて事務局が登録する形にすると、間違いが減ります。

支払い方法は「いくつ受けるか」を先に

カード決済・振込・当日払いを全部受けると、参加者には便利ですが、事務局は3つの記録を見比べることになります。所属先から支払う方がいるなら振込を残す、当日払いは当日登録の方だけにする、というように、受ける方法と対象を先に決めておきます。参加費をオンラインで受け取る方法の比べ方は、入会申込と会費・参加費をオンラインで受け付ける方法 にまとめています。

年会費を一緒に払えるようにするか

学術集会は、未納の年会費を払っていただく良い機会でもあります。参加登録の中で「年会費もあわせて支払う」を選べるようにすると、会員価格の確認と年会費の入金が一度で済みます。一方で、参加費と年会費は会計上の扱いが違うことが多いので、領収書を分けるか、入金先の口座を分けるかを、会計の担当の方と先に相談してください。既製の登録サービスでは、この同時支払いができるかどうかが分かれるので、比べるときの確認点になります。

4. 領収書・参加証明書・単位

  • 領収書:決済サービスの決済完了メールで足りるか、団体名の入った領収書を別に出すかを決めます。所属先の経理の事情で、宛名や但し書きを指定されることがあります。会計の扱いは、会計の担当の方や税理士などの専門家に確認してください
  • 参加証明書:会場参加なら受付の記録、オンライン参加なら視聴の記録など、「参加した」を何で確かめるかを決めます。開催後にまとめて送るのか、本人がダウンロードする形にするのかも決めておきます
  • 単位:専門医・認定資格などの単位の扱いは、単位を出す側の制度の規程によります。出席の確かめ方(受付の時刻、視聴時間など)が決められていることがあるため、登録の方法を決める前に、その規程と担当の窓口に必ず確認してください

5〜6. 締め切り・当日登録・返金

締め切りは、事前登録を増やすためのいちばんの道具です。早期の締め切りを設けると、名札や資料の準備数を早めに読めます。当日登録を受けるなら、当日の参加費と支払い方法、オンライン参加の当日登録を受けるかどうかも決めておきます。

キャンセルと返金は、次の4点を申込ページと受付の自動返信の両方に書きます。

  1. キャンセルの締め切り日
  2. 締め切り後の扱い(返金しない、資料の送付やオンデマンド視聴に切り替える、など)
  3. 返金するときの手数料の扱い
  4. 開催の中止やオンライン開催への変更のときの扱い

決済サービスによっては、返金しても手数料が戻らないことがあります。条件は各サービスの案内で確かめてください。

7〜8. 名簿との照合と個人情報

会員価格を設けるなら、「この方は会員か」を確かめる方法が要ります。確実なのは、登録のときに会員番号を入れてもらい、名簿と照合することです。照合の時期は、登録のたびに自動で確かめる形と、締め切り後に事務局がまとめて確かめる形があります。どちらにしても、番号を覚えていない方・年会費が未納の方・入会手続き中の方をどう扱うかを先に決めておくと、問い合わせへの答えがぶれません。

個人情報については、聞く項目を、受付・名札・証明書・連絡に必要なものに絞ります。所属や職種は名札や集計に使うことがありますが、自宅住所や生年月日は、使い道がなければ聞かない方が安全です。利用目的(受付、参加証明、次回の案内など)を申込ページに書き、参加者名簿を見られる人を事務局と運営の担当者に絞ります。次回以降の案内に使うかどうかや同意の取り方を含め、個人情報の扱いは、個人情報保護委員会の案内や団体の顧問の方に確認してください。

9. 当日受付の流れ

事前登録が増えても、受付で確かめることが多いままでは、行列は減りません。受付で「その場で判断すること」を減らすのがこつです。

受付でしていたこと 事前に済ませる方法の例
名前を名簿から探す 登録完了のメールに受付番号を入れ、番号順の一覧で探す
参加費の現金を受け取る 事前登録は事前払いにし、当日払いは当日登録の窓口に分ける
会員かどうかを確かめる 締め切り後に名簿との照合を済ませ、受付の一覧に区分を載せておく
名札を書く 登録の内容から名札を印刷しておく
領収書を書く 決済のメールや、事前に発行した領収書で足りるようにする

受付の窓口を「事前登録済み」と「当日登録・問い合わせ」に分けると、事前登録の方は名札を受け取るだけで済みます。

10. 終了後のデータ

開催が終わったあとに残るデータは、次の開催の準備を楽にする材料です。

  • 参加者名簿:区分・参加方法・支払いの状況つきで残します。翌年の案内や、非会員で参加した方への入会の案内に使えます(使う場合は、そのことを申込ページの利用目的に書いておきます)
  • アンケート:集計だけでなく、どの区分の方が答えたかがわかると、次の参加費や開催形式を考えやすくなります
  • オンデマンド配信:視聴できる期間、視聴できる人(参加登録者だけか、会員全体か)、期間が終わったあとの扱いを決めます。講演録画を会員だけに見せる方法は 講演録画を会員限定でオンデマンド配信する方法 にまとめています

開催ごとのページや記録を毎年別の場所に作ると、過去の開催が辿れなくなりがちです。過去の学術集会の情報を本体のホームページに積み上げて残す方法は、学会の過去の大会・抄録をホームページに残すには|特設ページを散らばらせない で紹介しています。

開催までの準備の流れ(一例)

時期は開催の規模や、登録を始める時期によって変わります。次は、事前登録を受け付ける場合の一例です。

時期の目安 すること
開催の6か月前ごろ 区分・参加費・支払い方法・年会費の同時支払いを決める。単位の規程を確認する
5か月前ごろ 締め切り・キャンセルと返金・個人情報の利用目的を文章にする。既製サービスか、ホームページに組み込む形かを決める
4か月前ごろ 登録ページと自動返信の文面を作り、事務局の中でテスト登録・テスト決済・返金を試す
3か月前ごろ 登録の受付を始め、会員へ案内する
早期締め切りの前後 名簿との照合をまとめて行い、照合できない方に連絡する
事前登録の締め切り後 受付の一覧と名札を作る。オンライン参加の方へ視聴の案内を送る
開催当日 事前登録の窓口と当日登録の窓口を分ける。当日登録の分を記録する
開催後1か月ごろ 参加証明書・領収書の依頼に対応し、アンケートを集計する
オンデマンド配信の終了後 視聴の記録を整理し、参加者名簿・アンケートと一緒に保管して、翌年の担当へ引き継ぐ

テスト登録では、区分ごとに1件ずつ申し込み、自動返信の参加費・受付番号・キャンセルの案内が正しいかを確かめます。返金の操作も一度試しておくと、本番で慌てずにすみます。

システムを選ぶときに確かめること

10のことが決まったら、候補のシステムで次の点を確かめます。既製の参加登録サービスで十分な学術集会も多く、その場合は無理に作る必要はありません。

  • 決めた区分と参加費を、そのまま選択肢にできるか
  • 会員番号の入力欄があり、名簿と照合できるか(自動か、書き出して照合するか)
  • 年会費を同じ登録の中で払えるか
  • 領収書・参加証明書を出せるか、宛名を参加者が指定できるか
  • キャンセル・返金の操作を事務局でできるか
  • 参加者名簿・アンケート・視聴の記録を、表の形で書き出せるか
  • 開催が終わったあとも、データが団体の手元に残るか

自分の会で確かめる3つの質問

  1. 前回の学術集会で、事務局が個別に判断した申込は何件ありましたか。 多ければ、区分や締め切りのルールが、登録画面に書ける形になっていないのかもしれません
  2. 会員価格で登録した方が本当に会員かを、いつ・誰が確かめていますか。 決まっていなければ、会員番号の入力と照合の時期から決めるのがおすすめです
  3. 過去の参加者名簿とアンケートは、今どこにありますか。 すぐに出せないなら、終了後のデータの置き場所を今回から決めておく時期です

今の登録の流れを1枚にするところから

River Techの 学会・研究会の事務局向けのご案内 では、学術集会・研修会の申込から参加費の決済までを、今の名簿を活かしてつなぐ形を紹介しています。「棚卸し診断」(オンライン45分・15,000円(税込))では、今の申込・入金の確認・当日受付・終了後の名簿づくりのどこに手間がかかっているかをうかがい、「手間の地図」1枚にまとめてお渡しします。既製の参加登録サービスで足りる場合は、そのようにお伝えします。

よくある質問

参加者が少ない研究会でも、参加登録をオンラインにする意味はありますか?

参加者が数十名でも、申込の書き写しや当日の現金の扱いが減るだけで、事務局の手間は変わります。まずは申込だけをフォームにして、支払いは振込や当日払いのままにする始め方もあります。

当日登録はなくしてもよいですか?

団体の方針によります。当日の参加を受ける会も多いため、残す場合は受付の窓口を事前登録の方と分け、当日の参加費と支払い方法を事前に案内しておくと、受付が混みにくくなります。

オンライン参加の方の参加証明書は、どう出せばよいですか?

まず、ログインの記録や視聴時間など、参加したことを何で確かめるかを決めます。専門医や認定資格の単位に関わる場合は、単位を出す側の規程で確かめ方が決まっていることがあるため、登録の方法を決める前に確認してください。

参加登録のシステムは、既製サービスとホームページに組み込む形のどちらがよいですか?

決めた区分、会員番号の照合、年会費の同時支払い、データの書き出しを満たせるかで比べてください。既製サービスで満たせるなら、そちらが手軽です。名簿との照合や年会費の支払いまで一つの流れにしたい場合は、組み込む形が合うこともあります。

学会・研究会の事務局の方へ

今のやり方を活かして、事務局の手間をひとつずつ減らします。

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