医療系セミナーの講師への依頼と同意のとり方|録画・資料・患者情報

医療系の学会・研究会公開 River Tech合同会社

医療系・歯科系のセミナーや講演会では、講演が終わってからの「録画を会員に配信してよいか」「スライドを配ってよいか」という確認が、事務局の大きな手間になりがちです。この記事では、講師に依頼する段階で決めておくこと、依頼状・同意書に入れる項目、依頼から公開までの流れ、そして講師が後から同意を取り下げたいと言ったときの対応を順にまとめます。

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結論:依頼の段階で「講演の使い方」まで書いて、返信で同意をもらう

  • 講演の日時と演題だけでなく、録画・配信・資料の配り方まで依頼状に書く。後から一つずつ聞き直すより、講師にとっても判断しやすくなります
  • 症例写真・患者情報・他の人の図版は、講師に確認してもらう項目として明記する。事務局が中身を判断するのではなく、確認したかどうかを記録します
  • 同意はメールや書面で残し、取り下げの連絡先も書いておく。公開をやめる手順まで決めておくと、いざというとき慌てません

この記事は、事務局の段取りを整理するためのものです。個人情報・患者さんの同意・著作権・利益相反など、法律や指針の判断がかかわる部分は、厚生労働省の資料、所属学会の指針、会の顧問や法律の専門家に確認してください。

講師と先に決めておく6つのこと

項目 決めること 決めておかないと起きやすいこと
録画と配信 録画するか、だれに、いつまで見せるか 開催後に配信の可否を聞き直す。返事待ちで公開が遅れる
講演資料の配布 配るか、どの形式で、どこまでの人に 配ったPDFが会員以外に転送される
症例写真・患者情報 同意と匿名化を講師が確認済みか 一般公開のページに症例画像が残る
他の人の図版 出典の表記、録画・配布で使ってよいか 会場では見せた図を、録画から差し替える手間が出る
利益相反(COI)の開示 会の様式のスライドを入れるか 開示のない講演が録画で長く残る
講師の紹介の掲載 氏名・所属・略歴・顔写真を告知に載せてよいか 告知ページの写真や肩書きを後から直す

1. 録画と配信

録画をするなら、次の4点を具体的に書きます。

  • 見られる人:当日の参加者だけ、会員だけ、一般公開、のどれか
  • 期間:開催後の一定期間だけか、会員向けのアーカイブとして残すか
  • 編集:質疑応答を外す、一部のスライドを隠すなど、編集する場合があること
  • 配信の方法:会員ページの中で見せるのか、動画サービスの限定公開か

「会員限定」と書く場合は、どの方法で限定するのかも講師に伝えると誤解が減ります。たとえば一般に、URLを知っていればだれでも見られる設定は、厳密な会員限定とは言いにくいものです。配信方法の選び方は「学会・研究会の講演録画を会員限定でオンデマンド配信する方法」にまとめています。

2. 講演資料の配布

スライドの配布は、録画とは別に同意をもらいます。録画は良いが資料は配りたくない、という講師も少なくありません。

  • 配るかどうか(配らない・当日の会場だけ・会員ページに置く)
  • 形式(閲覧だけか、PDFのダウンロード可か、印刷して配るか)
  • 配布用に一部のページを外した版を別に用意してもらうか
  • 置いておく期間

ダウンロードされたファイルは、後から回収できません。迷う講師には「会員ページで閲覧だけ」「期間を区切る」など、範囲を狭めた選択肢を示すと決めやすくなります。

3. 症例写真・患者情報

医療系のセミナーで、いちばん慎重に扱いたいのがこの項目です。一般に、症例の発表について患者さんから同意をもらい、匿名化するのは、発表する講師と所属する医療機関の側と整理されることが多いです。ただ、会として講師にどこまでの確認を求めるか、録画や資料を会のサイトに置くときにどう扱うかは、所属学会の指針や、個人情報保護委員会・厚生労働省の医療・介護関係事業者向けのガイダンスなどを参考に、会で決めておく必要があります。

事務局の手順としては、次の3点を講師に尋ね、回答を記録しておくのが現実的です。

  • [ ] 症例写真・検査画像を使う場合、患者さんの同意は録画・配布の範囲まで含めて得ているか
  • [ ] 画像のすみの氏名・番号・日付、施設名、ファイルに残る撮影情報を消してあるか
  • [ ] 会場では見せるが、録画や配布からは外したいページはあるか

会場で一度見せることと、録画や資料として長く残ることでは、患者さんにとっての影響が変わる場合があります。録画と配布の範囲を、同意の範囲と照らし合わせて確かめてもらいましょう。

4. 他の人の図版の著作権

論文の図表、教科書の図、インターネット上の画像がスライドに入っていることがあります。会場での講演と、録画の配信や資料の配布とでは、扱いが変わる場合があります。出典の書き方や、録画・配布でも使ってよいかは講師に確認してもらい、心配なページは差し替えるか、録画と配布から外します。判断に迷うときは専門家に確認してください。

5. 利益相反(COI)の開示

会や所属学会に開示の規程がある場合は、様式と入れる場所(講演の冒頭など)を依頼状に書きます。録画を配信するなら、開示のスライドも録画に残す扱いにしておくと、後から見る人にも同じ情報が届きます。規程がない会は、関係する学会の指針を参考に、扱いを決めておきましょう。

6. 講師の紹介の掲載

告知ページやチラシに載せる項目(氏名・所属・役職・略歴・顔写真)も、依頼の段階で確認します。所属や役職は変わることがあるため、掲載前に本人に見てもらう流れにしておくと安心です。謝礼や交通費などの条件は会の規程に沿って別に伝えるものとして、この記事では同意にかかわる項目に絞っています。

依頼状・同意書に入れる項目

会の書式に合わせて、次の項目を入れておくと漏れが減ります。

講演の基本 - [ ] セミナー名、開催日時、会場またはオンラインの別 - [ ] 演題、講演時間、質疑応答の有無 - [ ] 講演資料の提出期限と提出先

録画と配信 - [ ] 録画の有無 - [ ] 配信する範囲(参加者・会員・一般)と方法 - [ ] 配信する期間 - [ ] 編集する場合があること

資料の配布 - [ ] 配布の有無と範囲 - [ ] 形式(閲覧のみ・ダウンロード可・印刷) - [ ] 置いておく期間

講師に確認してもらうこと - [ ] 症例写真・患者情報の同意と匿名化 - [ ] 他の人の図版の出典と、録画・配布での利用 - [ ] 利益相反(COI)の開示(会の様式) - [ ] 告知に載せる紹介の項目

記録と連絡 - [ ] 公開前に講師が確認するかどうか - [ ] 同意を変更・取り下げたいときの連絡先と方法 - [ ] 同意の日付と、同意の方法(返信・署名など)

講師が「すべて同意」か「一部だけ」かを選べるように、録画・配信・資料の配布を別々の欄にしておくのがこつです。

依頼から公開までの流れ

段階 事務局がすること 講師にお願いすること
1. 依頼 上の項目を入れた依頼状を送る 講演を受けるか、録画・配布の可否を返信
2. 同意 返信を保存し、同意の範囲を一覧に記録 同意できない項目があれば伝える
3. 資料受領 提出期限の前に一度案内する 当日用と配布用(必要なら別の版)を提出
4. 確認 同意の範囲と照らし、録画・資料の公開範囲を設定 公開前の画面や編集後の録画を確認
5. 公開 会員ページなどに載せ、ログインしていない状態で見え方を確かめる ―

時期の目安は会の慣例によりますが、資料の提出期限は開催日より前に、確認の時間を見込んで設けておくと、当日の差し替えに追われにくくなります。同意の内容は、講演ごとに「録画○・配信は会員のみ・期間・資料は閲覧のみ」のように一覧にしておくと、事務局の担当が替わっても引き継げます。

講師が後から同意を取り下げたいと言ったら

公開後に「配信をやめてほしい」「このスライドだけ外してほしい」と連絡が来ることがあります。慌てないよう、手順を決めておきます。

  1. 連絡を受けた日時と内容を記録する。全部をやめたいのか、一部だけか、いつまでにかを確かめます
  2. 公開を止める。会員ページから動画や資料を外す、動画サービスの公開設定を変える、配布用のリンクを外す、の順で、置いた場所をすべて確かめます
  3. 止めたことを講師に伝える。あわせて、すでにダウンロードされた資料や視聴済みのものは回収できないことも、正直に伝えます
  4. 一部の差し替えなら、編集版を講師に確認してもらってから載せ直す
  5. 同意の一覧を更新する。次回以降の依頼状に、取り下げの方法をわかりやすく書いておきます

取り下げにすぐ応じられるかは、「どこに何を置いたか」がわかっているかで決まります。録画と資料の置き場所を一か所にまとめておくことが、いちばんの備えです。ホームページ全体で気をつけたい点は「医療系の学会・研究会のホームページの注意点」もあわせてご覧ください。

だれが何を確かめるかの線引き

確認すること 講師 事務局 会として決めること
患者さんの同意と匿名化 ○ 確認して回答 回答を記録 講師に求める確認の範囲
図版の出典と利用 ○ 確認して回答 回答を記録 迷うときの相談先
COIの開示 ○ スライドを用意 様式を案内 開示の規程
録画・資料の公開範囲 同意 ○ 設定と確認 会員限定の方法
取り下げへの対応 連絡 ○ 公開を止める 連絡先と手順

事務局がスライドの中身の良し悪しまで判断するのは、負担も責任も大きくなります。中身は講師、設定と記録は事務局、決まりは会、と分けておくと、一人の担当者に判断が集まりにくくなります。

講演の録画や資料を会員ページに置き、名簿と結びつけて「見られる人」を管理する仕組みは、医療系の学会・研究会のご案内で紹介しています。今のホームページを見て直す点をまとめる「ホームページの改善案」のほか、講演の受付から配信までの手間を整理したい場合は、棚卸し診断(オンライン45分・15,000円(税込)・「手間の地図」1枚)もご利用いただけます。River Techが制作したJIP 公式ホームページには、会員だけが見られる講義動画のページがあります。

自分の会で確かめる3つの質問

  1. 今の講師への依頼状に、録画の配信範囲・期間と、資料の配布の形式が書いてありますか?
  2. 公開している講演の録画と資料について、それぞれの講師がどこまで同意したかを一覧で答えられますか?
  3. 講師から「配信をやめてほしい」と連絡が来たら、だれが、どこを止めるか決まっていますか?

答えに詰まる項目があれば、次回のセミナーの依頼状から書き足していきましょう。

よくある質問

講師の同意は、メールの返信だけでもよいですか?

多くの会では、依頼のメールに同意してほしい項目を具体的に書き、「同意します」という返信を記録として残す形をとっています。書面の同意書が必要かどうかは会の規程や慣例によるため、迷う場合は会の顧問や専門家に確認してください。大切なのは、何に同意したのかが後から読み返せることです。

スライドの症例写真について、患者さんの同意は事務局が確認するのですか?

一般に、患者さんから同意をもらうのは症例を発表する講師(と所属する医療機関)の側と整理されることが多いです。ただ、会として講師にどこまで確認を求めるかは、所属学会の指針や関係するガイダンスを参考に会で決めておく必要があります。事務局は「確認済みかどうかを講師に尋ね、その回答を記録する」までを手順にしておくと安心です。

一度配った講演資料のPDFは、後から回収できますか?

一般に、ダウンロードされたファイルを確実に回収する方法はありません。会員ページからリンクを外したり公開を止めたりはできますが、手元に保存された分は残ります。配布の範囲と形式(閲覧だけか、ダウンロード可か)を依頼の段階で講師と決めておくことがいちばんの備えです。

利益相反(COI)の開示は、どの講演でも必要ですか?

開示の要否や様式は、所属学会や会の規程によって異なります。会で規程がある場合は、その様式のスライドを講演の冒頭に入れてもらうよう依頼状に書いておきます。規程がない場合は、関係する学会の指針を参考に会としての扱いを決めておきましょう。

医療系・歯科系の学会・研究会の方へ

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