中小企業のAI導入は何から?事務作業で小さく始める4つの手順

AI・業務の自動化公開 River Tech合同会社

「AIで業務を楽にしたいけれど、何から始めればいいのかわからない」。少人数の会社や学会・協会の事務局、店舗で、よくうかがうお悩みです。この記事では、AIや業務の自動化をはじめて取り入れるときの順番を、向いている作業・向かない作業の例、情報の扱いのルールとあわせて、表とチェックリストでまとめます。

結論:道具より先に、作業を書き出す

先に結論をまとめます。

  1. 今の業務を書き出す(AIの道具を選ぶのは、そのあと)
  2. くり返している小さな作業を1つだけ選ぶ
  3. 差しさわりのない素材で、小さく試す(使う前と後の時間を記録する)
  4. 続けると決めた使い方を、手順とルールにして根づかせる
  5. 個人情報や機密は入力しない、と試す前に決めておく

多くの場合、つまずきの原因は「どのAIを使うか」ではなく、「何に使うか」が決まっていないことです。反対に、作業が1つに絞れていれば、少人数でも始めやすくなります。

手順1:今の業務を書き出す

最初は、ふだんの仕事を思いつく順に書き出します。きれいにまとめる必要はありません。1つの作業を1行にして、次のような表にすると、あとで選びやすくなります。

作業 どのくらいの頻度か 手間の感覚 扱う情報 人の判断が要るか
問い合わせメールへの返信 毎日 似た文面を何度も書いている お客様の名前・連絡先 内容による
会議の議事録づくり 月2回 録音を聞き直すのに時間がかかる 社内の話し合い まとめ方の確認は要る
お知らせ文の作成 月数回 書き出しに迷う 公開予定の情報 最後の確認は要る
申込の一覧の整理 毎週 表記ゆれを手で直している 申込者の情報 ほぼ不要

書き出すときは、次の点を意識すると候補が見つかりやすくなります。

  • 毎週・毎日のように、同じ形でくり返している作業はどれか
  • 「書き出しに迷う」「聞き直す」「写し直す」など、時間が消えている場面はどこか
  • その作業で、どんな情報(個人情報・取引先の情報など)を扱っているか
  • 最後に人が判断しなければならない部分はどこか
  • 担当の方が休むと止まってしまう作業はどれか

手順2:小さくくり返す作業を1つ選ぶ

書き出した中から、最初に試す作業を1つだけ選びます。一般に、文章をつくるAI(生成AI)は「下書き」や「まとめ」のように、人があとで確かめる前提の作業と相性がよいとされています。

向いている作業の例

作業 AIに任せる部分 人が行う部分
文章の下書き お知らせ文や案内文のたたき台をつくる 事実・日付・金額の確認と仕上げ
問い合わせの一次返信案 よくある質問への返信の下書きをつくる 内容を確かめてから送る
表の整理 表記ゆれの統一や、項目の分け方の案を出す 結果を見比べて確かめる
議事録の要約 話し合いの要点と決まったことをまとめる 抜けや言い間違いがないか確かめる

向いていない作業の例

  • 最終的な判断や決裁(採否、値引き、契約の可否など)
  • 金額や数字を確定させる作業(請求額、会費、在庫数など)
  • 個人情報や機密を入力しないとできない作業
  • 法令や業界の決まりに関わる判断
  • 年に1回しかなく、手順を整えても効果を確かめにくい作業
  • 相手の気持ちへの配慮が大切な、おわびやクレームの最終的な返答

なお、困っている作業によっては、AIではなく「申込フォームの自動返信」や「表とメールをつなぐ小さな自動化」の方が合うこともあります。名簿や申込の表まわりの手間については、学会事務局の効率化|名簿と会費管理はスプレッドシートのままで でもまとめています。

最初の1つを選ぶチェックリスト

  • くり返しの頻度が高い(毎日・毎週)
  • 出来上がりを人がすぐ確かめられる
  • 間違えても、外に出る前に気づける
  • 個人情報や機密を入力しなくても試せる
  • 試す担当の方が決まっている

手順3:小さく試す

選んだ作業を、いきなり全員で使い始める必要はありません。次の順で、小さく試します。

  1. 試す担当の方を1人か2人に決める
  2. 使う前に、今その作業にかかっている時間や手間をメモしておく
  3. 公開済みの情報や、個人がわからないように直した素材で試す
  4. AIが出した結果は、必ず人が確かめてから使う
  5. しばらく使ったら、使った後の時間や手間をメモと見比べる
  6. 「続ける」「やり方を直す」「やめる」を、結果を見て決める

例:議事録の要約を試す

  1. 社外の方の名前や個人情報が出てこない、社内の打ち合わせを選ぶ
  2. 文字にした記録(メモや文字起こし)を用意する
  3. 「決まったこと」「次にやること・担当」「保留の議題」の3つに分けてまとめるよう指示する
  4. 出席者が読み、抜けや言い間違いを直す
  5. 自分で一からまとめたときと比べて、かかった時間を記録する

指示の書き方は、毎回同じ形にしておくと、出来上がりのばらつきが小さくなりやすいです。うまくいった指示の文面は、そのまま手順書に残しておきます。

手順4:使い続けられる形に根づかせる

試してよかった使い方も、担当の方しか知らないままだと、いつの間にか使われなくなりがちです。続けると決めたら、次のことを整えます。

  • 画面つきの手順書(どこに何を入力し、どう確かめるか)をつくる
  • 入力してよい情報・入力しない情報を、文書にして共有する
  • 業務で使うアカウントを、個人ではなく組織で管理する
  • 月に1回など、使いにくいところを話し合う時間を決める
  • 担当の方以外も使えるように、1度は一緒に操作してみる

うまくいった作業が1つできたら、次の作業に広げます。全部を一度に入れるより、1つずつの方が、どこが効いたのかもわかりやすくなります。

情報の扱いで決めておくこと

AIを業務で使うとき、いちばん気をつけたいのは「何を入力するか」です。試す前に、次の点を確かめてください。

  • 個人情報(お客様・会員・患者さんの情報など)を入力しない
  • 取引先との秘密の情報や、社外に出していない資料を入力しない
  • 迷う情報は「入力しない」側に分けておく
  • 使うサービスの規約と設定で、入力した内容がどこに保存され、AIの学習に使われるかどうかを確かめる
  • 外に出す文章や、判断に使う情報は、人が確かめてから使う
  • 社内の規程や、取引先・会員との約束ごとに反していないか確かめる

AIサービスの機能や規約、設定の項目は、サービスやプランによって異なり、変更されることもあります。使い始めたあとも、ときどき見直すと安心です。法令や業界の指針に関わる判断が必要な場合は、専門家に確認することをおすすめします。

AIを使わない方がよい場面

AIは便利な道具ですが、いつも使えばよいわけではありません。次のような場面では、使わない、または使い方を慎重に決める方がよいことが多いです。

場面 理由
正確さが欠かせない数字や事実を確定させるとき AIの出力には誤りが含まれることがあるため
個人情報を入れないと作業できないとき 入力した情報の扱いを確かめきれないことがあるため
法的な判断や、専門家の判断が要るとき 責任をもって判断できる人が確かめる必要があるため
作業がめったになく、手順も毎回ちがうとき 試しても、効果を確かめにくいため
既製のサービスや簡単な自動化で十分なとき 仕組みを増やすほど、引き継ぎの手間も増えるため

River Techの進め方

名古屋のRiver Tech合同会社では、AI導入支援・業務の自動化 を、次の3つの段階で進めています。

  1. 整理する:今の業務を書き出し、時間がかかっている作業や現場でいちばん困っている作業を見つけて、AIや自動化に任せやすい作業と、人が判断すべき作業を分けます
  2. 小さく試す:いちばん困っている作業から1つずつ、道具や仕組みを選んで試します。使う前と後で時間や手間を記録し、続けるかどうかを一緒に判断します
  3. 伴走する:画面つきのマニュアルをお渡しし、定例で振り返りながら、使いにくいところはその都度直します。担当の方以外も使えるようになるまで伴走します

導入するものは、業務によってさまざまです。書類をAIで読み取る仕組みが合うこともあれば、表とメールをつなぐ小さな自動化や、LINEでのお知らせが合うこともあります。たとえば日本労働教育総合研究所では、事務所の中で使う仕組みとして、書類の読み取り(AI)から申請書への自動記入・PDF化までの流れや、請求書の作成から保存までの自動化をつくりました(業務の仕組みづくりの実績)。

効果を前もってお約束することはできません。そのため、まず1つの業務で試し、時間や手間がどう変わったかを一緒に確かめてから、続けるか、広げるか、やめるかを決めます。既製のサービスの方が合う場合は、正直にそちらをおすすめします。

ご相談の前に、困っている作業のメモ(箇条書きで十分です)と、今お使いのソフトやサービスの名前をご用意いただくと、話が早く進みます。AI導入支援についてのお問い合わせ からどうぞ。

よくある質問

社内にAIやパソコンにくわしい人がいなくても始められますか?

始められます。最初にするのは、ふだんの作業を書き出すことで、AIの専門用語を覚える必要はありません。試す作業を1つに絞れば、くわしい人がいなくても様子を見ながら進められます。

無料のAIサービスで試してもよいですか?

試すこと自体はできますが、無料のプランと有料・法人向けのプランでは、入力した内容の保存や学習への使われ方が異なる場合があります。使う前に規約と設定を確かめ、最初は公開済みの情報など差しさわりのない素材で試すことをおすすめします。

AIを使えば、どのくらい時間が減りますか?

作業の内容や使い方によって大きく変わるため、前もって言い切ることはできません。だからこそ、1つの作業で使う前と使った後の時間を記録し、続けるかどうかを結果を見て決める進め方をおすすめしています。

AIを入れるより、ふつうの自動化の方が合うこともありますか?

あります。申込フォームの自動返信や、表とメールをつなぐ仕組みのように、AIを使わない小さな自動化で十分な作業も多くあります。道具から選ぶのではなく、困っている作業から考えると、どちらが合うかが見えてきます。

AI導入支援・業務の自動化のご相談

業務を整理して、小さく試して、使えるようになるまで伴走します。

導入するものは業務に合わせて選び、日々使えるようになるまで伴走します。